こいぬ書房

気になる出版物を紹介する、新刊書籍紹介tumblrです。管理人kの偏った選書でお届け。出版・書店業界のニュースをクリップしたりも。月別の新刊は最下部にある「アーカイブ」をご覧ください。

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    "吉村萬壱「ボラード病」は入院中に読んだ。とある海沿いの街。その街では、みんなと同じ物を食べ、同じように行動し、同じように故郷を愛さなければいけない。疑問を持たずに従いながら暮らす人ばかりだけれど、ある人にとってはとても窮屈で生きにくい、監視されているような暮らし。真っ先に連想したのは原発事故後の日本だったけれど、発達障害を持つ人から見える世界もこんな感じではないかと、ふと思った。偶然にも桐野夏生「ポリティコン」も理想郷に囚われながら生きる人たちを描いた話だった。私は過去に仕事絡みで似たような思想集団と深く関わったことがあるのだが、そこは確かにひとつの「国」だった。自分が今まで身に付けてきた常識や価値観は通用しない。その「国」を前に、ただ呆然とした。目の前にいるのにとてつもなく遠い、あの感覚をいつかまとめられたら、と思う。"
    — 9時間前・リアクション20件
    " 著者は、登場する十三人の社会的な「功績」(のちに評価が反転するわけだが)だけではなく、生い立ちなどの私的な面にも光を当てる。そのため、読者は十三人をとても身近に感じ、手に汗握って、あるいは切なく、かれらの運命を見守ることになる。
     私が特に好きだったのは、前述した十九世紀のロミオ役者、ロバート・コーツと、台湾人だと自称して十八世紀のロンドンを騒がせたジョージ・サルマナザールだ。コーツ氏の珍妙な舞台衣装と熱演ぶり(および観客の戸惑いと怒号)の描写は、腹の皮をよじれさせずに読むのが困難だ。見たかったよ、こんなすごすぎる『ロミオとジュリエット』! サルマナザール氏に至っては、数奇な人生すぎて、ここでは説明しきれない。彼は日本人を自称したこともあるのだが、実際はアジア人では全然なかった。
     本書に登場する人々は、ほとんどが失意と悲しみのうちに世を去り、死後の栄誉や称賛とも無縁だ。だが、著者の丹念な筆致は、大切な事実を浮き彫りにする。情熱を持って精一杯生きたひとのなかに、「敗れ去ったひと」など本当は一人もいないのだ、ということを。"
    — 1日前・リアクション3件
    #書評